●● ショート・ストーリー --- つきあかり ●●
中秋の月。白い月。吸い込まれてしまうほど白く、青い。
そんな、『つきあかり』を見ながらふと思う。
今、私の目指しているところは何処なのだろうかと……。
みんなを見ればそう思う。
竜太は一生懸命剣の道を進んでいる。北条くんも同じ。
東堂先輩は自分の道を探して、迷い、そしてついに見つけだした。
じゃあ、私は……?
つい最近までは竜太と此処(桜ヶ丘高校)に入ることが目標だった。
でも、それを成就した今、私は見失っている。自分の進むべき道を。
もちろん部活(なぎなた)はがんばっている。勉強もそれなりに。
でも……でも何か満たされないこの気持ち。何故?
たぶん私は竜太と一緒にいたい。今はただそれだけ。
そんな目標は変? 本当に今はそれだけしか見えないから。
何が足りないのかしら? 想い、気持ち、ちから?
思い切ってこの気持ちを竜太にぶつけて――、
ダメ……そんな勇気も出せない私。
考えれば考えるほど気持ちが重くなる。
だめ! こんなんじゃだめ!
『つきあかり』を見ながらふと思う。
こんな思いなんか全部吸い込んでくれたらいいのに。
だんだん自分自身がイヤになる……。
ふと携帯を見るとメールが届いていた。
差出人は竜太から……。
『最近元気ないって北条が言ってたけど大丈夫か?
今日も先に帰るからみんな心配してたぞ。
明日、北条とかみんなで帰りにどこか行こうぜ、
かえでの誕生日会もかねてな 竜』
(!)
思わず携帯抱きしめた。
涙があふれてくる。一人じゃない。みんながいてくれる。
なんて小さいことでクヨクヨしていたんだろう。
自分から殻に閉じこもってしまって、
余計に自分を見えなくしてしまっていた。
なんのことはない。今自分にできることを
目標にすれば良かったんだ。背伸びをする必要はないんだ。
いずれ見つかる、必ず見つかる。
簡単なことだけど、やっとわかった気がする。
もう一度『つきあかり』をみながら思う。
ありがとう。教えてくれて。
☆お気に召しましたら拍手をお願いします。
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